企業で働いていると、目標という言葉を耳にしない日はありません。企業全体の視点で見れば、崇高なビジョンやミッションが掲げられ、それが組織を導く指針となっています。
そしてその事業の成長を支えるために、KGI・KPI、OKR、MBOといったさまざまな目標管理の手法が存在し、それぞれのフレームワークが適用されています。
一方で現場に目を向けると、日々の業務では理想論だけでは語れない現実、異文化ならではの異なる価値観が存在。チームはウェットな汗を流しながら試行錯誤する日々が続きます。そして、企業人であっても結局はひとりの人間。生活を守り、感情を持ちながら働くという現実も無視できません。
では、この理想と現実の間で、どうすれば適切な目標設定ができるのか?その時、日本と米国での視点の違いを踏まえつつ、より実践的な方法を考えてみましょう。
目標設定の違いは「文化の違い」
日本の目標設定: 「挑戦することに意義がある」
日本では「努力目標」なんて言葉がある通り、「目標は少し背伸びするぐらいがいい」とされます。そしてたとえ達成が難しそうでも挑戦すること自体が高く評価されます。これは「努力を評価する」という『加点方式』の評価体系に由来しています。
達成できなくても「気概」や「どれだけ前向きに捉えるか」が評価の一部になるため、チームの士気を高める効果もあります。
このアプローチの利点は、長期的な視点で成長を促進できることです。ただし、現実との乖離が大きすぎると、目標未達が続いてチームのモチベーションを失うリスクもあります。

なんか昭和の根性論っぽい・・・。
これを欧米チームに話して”げんなり”されたことがあったなぁ〜
米国の目標設定: 「達成することが大前提」
一方、米国では目標設定に対してより「現実的な達成可能性」を重視します。ビジネスでは「目標を達成すること」が前提であり、未達成は個人やチームのパフォーマンス評価に直接影響を与えます。この背景には、結果を重視する『減点方式』の評価体系があります。
米国企業では、プロジェクト開始前に「この目標は本当に達成可能か?」を小さいモジュールに分割して検討します。「キックオフ」みたいに総称される会議を経て、みんなが同意したらようやくスタート。道中であれこれ変えるのではなく、初めによく計算して「予定通り」を目指します。
コミットメントが明確なため、プロジェクトの進行中に責任感を共有しやすく、効率的な進捗管理が可能です。ただし、過剰に保守的な目標を設定すると、挑戦的なイノベーションを妨げるリスクがあります。

現実的な目標を立てると「やる気がない」と捉える日本の本社側とぶつかることも多かったなぁ・・・
グローバルには「挑戦性」と「現実性」のバランスが大事
日本の「加点方式」と米国の「減点方式」。この違いは、目標設定に大きな影響を与えます。
- 加点方式(日本):挑戦の姿勢や努力を評価。目標未達でも、成長や改善が見られればポジティブな評価につながる。
- 減点方式(米国):目標未達成が減点要因となる。事前に現実的な期待値を共有し、達成を前提に進める。
この違いを理解せずに相手と接すると、「なぜこんな非現実的な目標を立てるのか?」や、逆に「なぜ挑戦しないのか?」という誤解が生まれやすくなります。
どう活かす?グローバルでの目標設定のコツ
目標と目的の違いを整理する
目標を考える際にまず重要なのは、「そもそもこのプロジェクトの目的は何だっけ?」を明確にすることです。「このプロジェクトで何を達成しようとしているのか?」「中期計画において今期は何が達成できればOKなのか?」など、本質的な目的に立ち返ることが大事です。
- 目的を明確にする: プロジェクトの最終的なゴールを定義し、全員が共有できる状態にする。
- 優先順位を決める: 「ここまでは必達(must)だが、ここから先は達成できればプラス(nice to have)」と明確に線引きをする。
基本的には目標を管理する人も、達成に向けて執行する人も「同じ目線になる」と言うことが一丁目一番地です。
期待値を明確にすり合わせる
グローバルなメンバーは「Expectation」という言葉をよく使います。「期待値」「達成基準」「成果物の定義」「評価方法」を具体的に話し合います。できるだけ「Measurable」な目標を設定することで、「成功」に対する曖昧さをなくし、認識のズレを防ぎます。
- 達成基準を明確にする: 「成功」とは何かを明確にし、定量的な指標を設定する。
- 成果物の定義を統一する: チーム全員が同じ完成形(deliverable)をイメージできるようにする。
- 評価方法を透明にする: 何をもって評価するのかを共通認識として持つ。
このプロセスを事前にしっかり行うことで、「思っていたのと違う」といったトラブルを防ぎ、スムーズな進行が可能になります。
フィードバックを頻繁に行う
日本企業では期末評価に偏る傾向がありますが、米国では定期的な進捗確認が一般的です。進行中の課題や成功を共有し、柔軟に目標を見直すことが大切です。
- 定期的なキャッチアップを実施: 週次・月次で進捗を確認し、問題点を早期に発見する。
- 建設的なフィードバックを行う: 批判ではなく、「どうすればより良くなるか」をベースに意見を出し合う。
- 目標の修正を許容する: 状況に応じて目標を柔軟に調整し、現実的な達成を可能にする。
特にリモートワークや国をまたいだプロジェクトでは、こまめなコミュニケーションが成功の鍵となります。計画的なF2F(Face to Face)の時間確保も大事になります。時差によってこの確保が困難になることも多いので、あらかじめ「Weekly」「Bi-Weekly」など、半年くらいのスパンで日程を設定してしまうのがおすすめです。
結論:文化の違いを理解し、柔軟に対応しよう
目標設定は組織の成長を加速させる重要な手段です。一方で、グローバルチームには異なる文化背景が存在していることも忘れてはなりません。
日本と米国の文化的な違いを理解することは、グローバルビジネスで成功する第一歩です。「挑戦する姿勢」と「現実的な期待値」の両方をバランスよく取り入れること。文化的なギャップを埋めながら、チームのパフォーマンスを最大化できます。
皆さんのチームではどうしていますか?コメントで教えてください!
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